(サリーのおねいさんの話)
第11章 サリーのおねいさんの話
ムティアラでのハイライトには、ヨウコの話ともう一つの結婚話がある。確か3回目あたりだったと思う。(バリに通っていた時は、年に2回位で、正月に1週間位と4月〜6月の間で3週間滞在のパターンを4年間繰り返した。年に1ヶ月バリに滞在している計算になる。)いつも一人で行っている為(5回目からは、ダイビングの為に行った)従業員が気を利かして、話に来てくれるのだ。その時、話に困って宿泊客の話になってしまう事も多い。でも、当たり障りの無い話や何で僕が結婚してないんだとか長期間滞在すると色々な話になる。ましてや1ヶ月間以上も滞在している計算では、誰がどうでとか、ここのオーナーの話などほとんど語り尽くすような状態になっていた。そして、その様な話が出来る雰囲気があった。
まだ、ムてィアラがどんなコテッジだったかを書いていないので、書いて行く事にする。そこそこ広い敷地の中に4部屋1棟のコテッジが点在していて、各部屋の入り口にはテラスが在り椅子が2脚とテーブルがあった。深く腰掛けると生け垣で周りから見えなくなる作りになっていた。敷地内には花が多く植えられていたので、公園の中に住んでいるような雰囲気もあった。このような状態での話だから、何でも喋ってしまっても、その内容は二人にしか分からない秘密になった。でも一つだけ問題があった。それは、花の蜜目当ての大きな蜂が飛んでくる事だった。
仕掛人は、ミキーだった。
「大平は、バリが好きなのよ、大丈夫」とミキーが言ったのが遠くの方で聞こえた。
「・・・・・・」
「・・・・・・・」と途中の会話は聞き取れなかった。
「もし、結婚したら、私の家は***の家ではなくなるからね」とサリーが言った。その時点でその会話が何を意味しているかは分からなかった。(***の家は、ヒンズーの階級らしかった。)ミキーとサリーは結婚しているのを、マディーから聞いて知っていたが、当人達に聞くと
「シングル」という答えしか返ってこなかった。何故独身と答えるかは、いまだに確たる原因が分からないが、礼儀の一つと軽く考えていた。ミキーとサリーは、伴に細めで特にミキーは、日本人に受ける顔立ちをしていた。それを裏付ける話としては、こんな事があった。僕が始めてバリに来た時に白いウ○コの解説をしてくれた初老の男性にテレビをプレゼントされたそうで、お礼に家で食事をした時に、Hされそうになったと、ロビーで大騒ぎしていた。馬鹿な爺さんと思いつつも、男の本能をくすぐるミキーにも責任はあると思った。したたかなんだよなって。(この当時、テレビは、日本円で3万円位、ミキーの数ヶ月分の給料に当たる。)1発3万円の計算をした爺さんとプレゼントは貰い得と考えていたミキーとの勝負は、ミキーに軍配が上がった。
数日後、いつもの通りテラスで本を読んでいると、サリーがやってきて
「ハロー ハウドゥーユウドゥウ」と言い
「アイム ファイン」と答えた。
「座っていい」と聞かれたので
「OK」と答え、サリーは隣に座った。しばらく、世間話をした後
「マイファミリー」と言って、1枚の写真を手渡した。そこには一人の女性の半身が写っていた。一瞬誰と思ったが、それほどの美人でもなかったので
「YOUR MATHER?」と言ったら、いきなり厳しい顔になり、写真を引っ手繰るようにして無言で立ち去ってしまった。あれーと思いつつも、また、穏やかな時間が流れ始めた。
後で判った事だが、その写真はサリーのお姉さんで、ミキーが仕掛けたとマディーに教えてもらった。それ以来サリーには冷たくされたが、出産祝いで日本製の哺乳瓶を送ってから、また口を利いてもらえるようになった。
サリーのおねいさんの話 終わり